こんにちは、丘紫真璃です。
毎日うだるような暑さが続きますが、そんな猛暑の日にピッタリの絵本、『なつのいちにち』を紹介したいと思います。
ここ最近、日中は危険な暑さが続いて、外で遊ぶことがなかなか難しくなってしまっています。冷房の効いている部屋の中にいないと、熱中症で倒れてしまう危険があり、どうしても、室内にこもりがちですよね。
ですが、この絵本は、まだ外で遊べるレベルの暑さだったひと昔前の夏の子どもの一日が、鮮やかに描かれているのです。こんな夏休みを過ごせた昔は幸せだったんだと、しみじみと感じてしまいます。
今回は、そんな『なつのいちにち』とヨガの関係をみなさんと考えていきたいと思います。
様々な活躍を見せる絵本作家

著者は、絵本作家でありイラストレーターでもある、はたこうしろうさん。京都精華大学美術学部を卒業しています。
『なつのいちにち』などの絵本の他にも、数々の絵本や児童文学作品のイラストを手がけています。妻のおーなり由子さんと手がけた絵本『ゆきのこえ』では、第56回講談社絵本賞、第30回日本絵本賞を受賞しています。
その他にも、イラスト、ブックデザインなども多く手掛けており、現在も様々な活躍を見せている名絵本作家&イラストレーターです。
クマゼミをつかまえたい!

まずは、この絵本の表紙を見た途端、暑い夏を感じます。
麦わら帽子をかぶり、虫取り網を持った男の子が、海をバックに、背の高い緑の野原の坂道を駆け上がってくる表紙なのですが、もうそれを見ただけでも、まぶしい夏の光や、汗、波の音や、草の匂いを感じます。
そんなまぶしい表紙に惹かれてめくってみますと、物語の始まりでは、1人の男の子が家から出かけようとしています。
いってきまーす。
あつい あつい なつのひ。
きょうは ひとり。おにいちゃんも いないはたこうしろう.『なつのいちにち』. 偕成社.2019.pp,1-2
麦わら帽子をかぶり、虫取り網を持った男の子は、昔ながらの家が並ぶ通りを走ります。今日こそ、クマゼミを絶対1人で捕まえるぞ! と意気込みながら、走っていくのです。
カモメの飛び交う青い海の砂浜を駆け抜け、緑広がる田んぼの道を走っていき、牛小屋の前を突っ走り、神社の長い階段を、ハアハアハアハアと荒く息をつきながら登っていきます。
黒い影が絵の中にくっきりと落ちて、夏のまぶしく暑い光が絵の中からあふれ出します。男の子と共に、全身で夏の暑い空気を感じながら、読者は山の中へと誘われていきます。
山に分け入り、谷をとーりゃあっ! と飛び越えて転んで、ケガをした泣きべその男の子の周りには深い山が広がり、せせらぎが足元を流れ過ぎ、シャーンシャーンシャーンシャーンと、セミの音が響きます。
そして、でっかいクワガタを見つけた男の子は、木に飛びついては転び、泥んこになりながらもあきらめず、とうとうしっかりと捕まえて家に帰るまでの光景が、鮮やかに描かれます。
絵の素晴らしさは、いくら口で語っても伝わりにくいと思うので、ぜひ実際に手に取って見て下さい。
絵本からあふれる夏を全身で感じる

この絵本の帯には、著者のはたこうしろうさん自身の言葉が書かれています。
『目で音が聴けたら』
この本には、少ししか文章がありません。あっという間に読めてしまいます。でも、絵と物語をゆっくり追うことで、それぞれの人が知っている「夏の音」や「夏の匂い」、「夏の空気」を感じてもらえたらいいなと思います。
子どもたちとこの本を見るときには、文にない音を声に出したり、匂いや湿度や手に触れた感じなんかを物語といっしょに話してみたい。そう思ってつくった絵本です。はたこうしろう.『なつのいちにち』. 偕成社.2019.帯の言葉
確かに、この絵本をめくっていると、あふれるような夏の音や匂い、空気がせまってくるような感じがします。
シャーンシャーンシャーンとうるさいくらいに鳴り響くセミの声。海の波の音や、潮の香り。夏の暑い日差しや、むせるような暑い通り。牛小屋の臭い匂いや、山の緑の香りやせせらぎの音や香り。
全てが、鮮やかな夏の絵の1枚1枚から、強く漂ってくるのです。ページからあふれる夏にすっぽりと包まれてしまうような絵本なのです。
ヨガでも、五感を研ぎ澄ませることがとても大切だと言われています。
ヨガを行う時、ヨギーは自分の呼吸に全神経を集中させます。自分の呼吸の音や匂い、指先の感覚、筋肉の固さ、血液のめぐる感覚や身体の熱。
自分の五感全てを鋭く研ぎ澄ませ、今の自分の身体と心の状況をつかみ取ろうとします。そうして、ヨギーは自分の五感を鋭く研ぎ澄ませる訓練をするわけです。
なぜ、五感を研ぎ澄ませる訓練をするのかというと、それはヨガの考え方と関係があります。
ヨガでは、一人ひとりそれぞれが世界を作ると考えられています。
例えば、私とあなたが同じ海の前に立っていたとします。私は、青い空と波の音に夏を感じることでしょう。けれども、あなたは、青い空と波の音はもちろん、潮の流れや海水の透明度、貝殻の1つ1つの輝き、砂浜が足に触る気持ちよさを、1つ1つ、もっと鋭く感じるかもしれません。同じ海の前に立っていたとしても、私とあなたの海は、違ってくる可能性があります。
そのように、ヨガでは、世界は自分の心と身体が作り出すものだと考えられています。だから、五感を鋭く研ぎ澄ませることで、世界を彩り豊かにすることができるというわけですね。
世界をより豊かにすることで、幸せを感じ取りにいく。それが、ヨガの目的の一つだと言えるのではないでしょうか。
この絵本は読んでいるだけで、五感が刺激され、今は猛暑のためになかなか味わえなくなってしまった幸せの夏を、身体いっぱい感じることができます。
猛暑がひどすぎて夏が苦しくしんどくなってきた時には、ぜひ、この絵本を開いてみて下さい。夏の素晴らしさを全身で感じることができると思いますよ。










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