みなさん、こんにちは。丘紫真璃です。
今回は、『はらぺこあおむし』の絵本を取り上げたいと思います。
小さい頃に、『はらぺこあおむし』の絵本を読んだことがある方は、とても多いのではないかと思います。また、『はらぺこあおむし』の絵を、誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
私は小さい頃には、この絵本を知りませんでしたが、大人になって初めて読んだ時、その美しさに驚きました。ストーリーがとても単純でありながらも、ハッと胸をつかれる美しさがある絵本だと感じたのです。
そんなわけで、時代を超えて愛される『はらぺこあおむし』とヨガの関係を、みなさんと考えていきたいと思います。
初めての『はらぺこあおむし』は、日本で印刷された!?

『はらぺこあおむし』の作者エリック・カールは、1929年、アメリカのニューヨークで生まれました。
ドイツ人の両親のもとで育ち、幼い頃から父親によく散歩に連れていってもらい、虫や生き物のことをたくさん教えてもらったと言います。それが、自然をテーマにした彼の絵本につながっていったのかもしれません。
6歳の時にドイツに移住し、第二次世界大戦を体験しました。戦時中は、自由に絵を見ることもできなかったそうですが、一度だけ学校の先生が、ピカソやマティスの絵を見せてくれたことがあり、色彩豊かな名画にとても感銘を受けたそうです。彼の鮮やかな色彩の絵は、こうした体験が影響しているのでしょう。
1952年にアメリカに戻り、ニューヨークタイムズのグラフィックデザイナーとして働きます。1967年に『くまさん くまさん なにみてるの?』のイラストを担当して、絵本作家デビュー。『はらぺこあおむし』は、1969年にアメリカで刊行されました。
実は、『はらぺこあおむし』は最初、印刷してくれる会社が見つからなくて苦心したのだそうです。というのも、『はらぺこあおむし』は穴あきの仕掛けがあったり、ページサイズが小さかったり、大きかったりするからなのですね。
『はらぺこあおむし』の担当だったアメリカの編集者の人はとても困って、偶然、偕成社の今村さんに相談します。今村さんは『はらぺこあおむし』にとても感動して、心当たりの印刷会社に声をかけ、『はらぺこあおむし』を印刷してくれるように頼みました。
そうして、初めての『はらぺこあおむし』は、日本の印刷会社で印刷されたということです。驚きですね。
日本では、その7年後に翻訳出版されました。今や、世界中で翻訳されているエリック・カールの代表作である『はらぺこあおむし』は、世界各国で多数の賞を受賞しています。
青虫が蝶になる

『はらぺこあおむし』の何よりの魅力は、その色彩豊かな絵にあるでしょう。彼の絵は、色を塗った薄紙を切り貼りして作るコラージュという技法で描かれているそうで、形はものすごく写実的というわけではありませんが、大きくて、色鮮やかで、一瞬で子どもの気持ちをひく絵だと思います。
そんな色鮮やかなコラージュで描かれる『はらぺこあおむし』の物語は、ストーリーとしては、非常にシンプルです。
おひさまが のぼって あたたかい にちようびの あさです。
ぽん! と たまごから、ちっぽけな あおむしが うまれました。
あおむしは おなかが ぺっこぺこ。
あおむしは、たべるものを
さがしはじめました。エリック・カール. 訳 もり ひさし. 『はらぺこあおむし』. 偕成社. 1997. p,5
それから、1週間かけて食べるものはリンゴ、ナシ2つ、スモモ3つ、イチゴ4つ、オレンジ5つ、おまけに、チョコレートケーキや、アイスクリーム、ピクルス、チーズ、サラミ、ぺろぺろキャンデー、さくらんぼパイ、ソーセージ、カップケーキ、スイカといった具合。
さすがの青虫も、これだけ食べたらお腹が痛くなって泣いてしまいます。
そして日曜日。あおむしは、緑の葉っぱをとてもおいしく食べて、お腹の具合もすっかり良くなります。もうはらぺこではなくなったあおむしは、さなぎになり、そして、最後には、美しい鮮やかな蝶々となるのです。
サットヴァの視点で見る生命の不思議と面白さ

青虫が蝶になるなんて当たり前だと、私たちはつい、思ってしまいますよね。
でも、この絵本を通して見ると、小さな小さな青虫が、お腹いっぱい食べて、さなぎになり、そして、あんなに美しい蝶になるなんて、何て不思議で奇跡的なことなのだろうと、改めて気づかされます。
ヨガには、サットヴァという言葉があります。これは、子どものように純粋であると説明される言葉です。
まだ何も知らない子どものような新しい目で世界を見る時、そこには驚きと不思議がたくさんあります。それは、大昔、自然と共に生き、神話を信じていた太古の人々のまなざしとも似ているのではないでしょうか。そして、それこそが、サットヴァのまなざしではないかと思います。
サットヴァのまなざしで世界を見る時、私たちがつい当たり前だと思っていたものの美しさや面白さに、敏感に気がつくことができるのだと思うのです。エリック・カールは、サットヴァのまなざしをずっと持ち続けていた人でした。だからこそ、青虫がさなぎになり、そして蝶になるという当たり前なのに、不思議で神秘的なことを、こんなに胸をつかれるような美しい絵本に仕上げることができたのです。
彼は、『はらぺこあおむし』のほかにも、生命の神秘や面白さをテーマにした絵本をたくさん作り続けました。その原点は、子どもの頃の戦争体験にも影響があったかもしれません。
子どもの頃にドイツで第二次世界大戦を体験した彼は、おそらく、町が破壊され、人が死ぬ恐ろしい体験をたくさんしたことでしょう。死と破壊が身近にある恐ろしい体験をしたからこそ、幼い頃に父親と散歩で見つけた虫や生き物の美しさを、絵本という形に残したいと強く思ったのではないでしょうか。
エリック・カールの絵本は、世界にはこんなに美しく面白いものがあるよ、ということを、わかりやすく教えてくれます。
私が『はらぺこあおむし』の絵本を見た時に、とても美しいと感じたものはまさしく、生命の美しさそのものだったのでしょう。
『はらぺこあおむし』の素晴らしさは、絵を見ないとわからないと思うので、実際に手に取ってみることをおすすめします。お子さんと一緒に読んでも楽しいですし、大人の方が一人で読んでも素晴らしい本ですよ。ぜひ、読んでみてください!











