寒色系のオブジェで作られた表彰台ステージ

丘紫真璃が独断で考える 読書界のヨギー選手権 ~人外キャラクター編~

みなさん、こんにちは!丘紫真璃です。
前回「読書界のヨギー子ども選手権」を開催いたしましたが、今回は、人間以外で開催してみたいと思います。
というのも、読書界ですから、人間以外でも魅力的な登場人物がたくさんいますよね。妖怪や動物などで、みなさんが大好きなキャラクターがきっと、いると思います。
妖怪や動物たちだって、ヨギーだということにかけては人間に負けないという登場人物が絶対にいるはずです。というわけで、ヨギー選手権(人外キャラクター編)を早速、開催したいと思います。

もう一度選考ポイントのおさらい

静かな湖の近くのベンチに座る女性の背中

3回目になりますが、まずは選考ポイントのおさらいをしていきましょう。
ここで言うヨギーとは、ただヨガを習っている人のことを指すわけではありません。

『ヨガ・スートラ』によりますと、ヨガの一番の目的は、心を風のない日の湖のように澄んだ状態に保っておくことと書かれています。
つまり、選考ポイントの一番重要な点は、感情の波にのまれず、心がいつも穏やかに澄んでいるかどうかというところにあると言えるでしょう。

『ヨガ・スートラ』には、心を穏やかに保っておく方法がたくさん書いてあるわけですが、とにかく重要なポイントは、縛られないということにあるようです。
私たちは生きているだけで、多くのものに縛られています。所有欲、支配欲などの自分が持つ多くの欲望は、自分を縛るものの一種と言えますよね。また常識や偏見も、自分を縛るものだといえます。仕事、家族、お金、名誉も大切ではありますが、自分を縛るものだとも言えるでしょう。
そうした縛りがいかに少ないかということが、心をいつも穏やかに保っておくために大事だとヨガでは教えられますので、いかに、縛られていないかということが重要なポイントになってくると思います。

というわけで、早速、読書界のヨギー選手権(人外キャラクター編)のスタートです!

第3位:ドングリ山のやまんばあさん

山の上の楠の枝に座る山姥の背中

第3位に見事ランクインしたのは、日本を代表する児童文学作家である富安陽子が生み出した妖怪のやまんばあさんです。

ドングリ山のてっぺんに、やまんばあさんという、一人の山姥が住んでいた。
年は、二百九十六歳。それじゃあ、きっとヨボヨボだろうって?
いやいや、ドングリ山のやまんばあさんときたら、オリンピック選手よりも元気で、プロレスラーよりも力持ちだった。
山のふもとから頂上までのけわしい山道も、やまんばあさんがかけ上れば、たったの四分三十秒。人間なら大人だって、一時間はかかる道なんだ。

富安陽子.『ドングリ山のやまんばあさん』. 理論社.2003.p,6

人間の常識から大きく解放されているところは、やまんばあさんの強みですね。
久しぶりに町に行ったやまんばあさんは、車のことを見たこともない動物だと思って、ものすごく驚きます。

ずっと山にこもっていたわけですから、車を見て驚いてしまうのは当たり前なのですが、そんな見たこともないものを見ても、ちっとも怖がらずにワクワクするところが、やまんばあさんの素晴らしいところです。

何しろ、やまんばあさんときたら、車とかけっこ競争をしたくてたまらなくなり、勝手に走っている車と競争して、勝ってしまったりするんですから。
台風も雷も、嵐も、新しいものも、やまんばあさんを怖がらせることはできません。どんなものを見ても、やまんばあさんは楽しくてワクワクするばかりなんです。
だから、いつも心は楽しくて、怒りや悲しみ、不満といった負の感情はほとんど見受けられません。
しかも人が喜ぶ顔を見るのが大好きで、恩返しという言葉を聞いた時には、恩返しをして、誰かに喜んでもらいたくてたまらなくなります。誰かに恩を受けたわけでもないのに、恩返しだけはしたくてたまらないなんておかしな話ですが、やまんばあさんは、そんなことを考えてしまうんです。
よっぽど、誰かに喜んでもらうのが好きなんですね。

そんなやまんばあさんは、人間の常識や偏見とは無関係ですし、所有欲、支配欲、名誉、お金といった人間が縛られてしまいがちなものとも、徹底的に無縁です。ドングリ山のてっぺんの大きなクスノキに住んでいて、何を見ても楽しくなって、いつもゴキゲンなんです。

そんなやまんばあさんは、堂々の3位にランクインしてもいいのではと私は思いましたが、みなさんはいかがですか?

第2位:グレイラビット

イースターエッグのカゴを持つ服を着たうさぎ

第2位にランクインしたのは、かわいいウサギのグレイラビットです。
イギリスの名作家アリソン・アトリーの作品で、マーガレット・テンペストの可愛らしい絵で、世界中で人気となりました。

先程のやまんばあさんとは似ても似つかぬ可愛らしい灰色ウサギのグレイラビットですが、共通点もあります。それは、人が喜んでいる顔を見るのが好きだという点です。
グレイラビットは、森の外れの小さな家に、うぬぼれやの野うさぎヘアと、いばりやのリスのスキレルと一緒に暮らしています。ヘアとスキレルは、1日中じーっとしているばかりですが、グレイラビットは、ヘアとスキレルに気持ちよく楽しく暮らしてもらいたいと、常に忙しそうに、クルクルと働き回ります。

困っている人を見たら助けずにはいられない性格で、グレイラビットのシッポを取ってしまったフクロウがクシャミをしているのを聞いたら、風邪によく効くプリムローズ酒を持っていってあげたりするお人よしです。
誰かに喜んでもらえば満足で、いつもそれが成功してしまうので、心はいつも穏やかな楽しさで満ちていて、森におつかいに行きながら、スキップをしたり、跳ねたりするんです。

同居しているヘアとスキレルは、自分の服のことや、しっぽの美しさのことばかり考えて文句タラタラですが、グレイラビットは、それとは正反対ですね。

ヘアとスキレルが恐ろしいイタチに捕まった時にも、グレイラビットは自分が捕まったらどうしようとか、怖いとか、そんなことは一切考えません。ヘアとスキレルを助けたい一心で、勇敢に立ち向かっていくんです。

グレイラビットは、自分のあらゆる欲に全く縛られておらず、周りのために動くということを貫けるウサギです。そんなグレイラビットは、2位にランクインしても良いのではと、私は思ったのですが、みなさんはいかがでしょうか?

1位:ムーミンママ

丘に座って谷を見下ろすカバの背中

堂々の1位にランクインしたのは、ムーミンママです。
トーベ・ヤンソンが生み出した愛らしいムーミントロールをご存じない方はまずいないでしょう。主人公のムーミントロールのママは、だれかをお世話することが大好きな温かくて優しくて、最高のママです。

いつでもお客さんを泊める用意ができており、お客さんが夜中に来ようが、得体の知れない生き物だろうが関係なく、温かい食事と寝床を提供してあげます。だから、ムーミン屋敷は、常にお客さんでいっぱいで、家族以外の人がたくさん常住しているんです。

ムーミンママのところには、いつも困った人が助けを求めてやってきます。
おばさんに皮肉を言われすぎて姿が見えなくなってしまった女の子ニンニも、ムーミンママに助けを求めてやってきた1人です。ムーミンパパは、姿が見えないことを問題視して、病院に連れて行った方がいいのではと考えますが、ムーミンママは、そうは考えません。

「きっとこの子は、しばらくのあいだ、見えなくなっていたいと思ったのよ」

トーベ・ヤンソン.山室静.『ムーミン谷の仲間たち』.講談社文庫.2006.p,145

そう言って、ニンニに温かい寝床とご飯をあげるだけで、後はうるさいことは言わず、好きなようにさせておいてやります。
誰だって姿が見えない女の子を見たら、ムーミンパパみたいに姿が見えないことを問題視して、病院に連れて行った方がいいんじゃないかと思ってしまいますよね。
もちろん親切から出た考えではあるのですが、それは、姿が見えるようにならなきゃいけないとニンニを追い詰めてしまうかもしれません。
ところが、ムーミンママは、ただニンニをそっとしておいてあげるんです。だからこそ、ニンニはムーミンママに心を開き、だんだん姿を見せ始めます。

ムーミンママは、相手のこだわりや暮らし、その人の大事なものや考え方を尊重できる人です。自分の考え方を決して相手に押しつけず、最大限、相手の自由を尊重します。
相手を決して自分の考えで縛ったりしないのに、温かく包み込むように見守ってくれるから、みんな、ムーミンママに頼りたくなるんです。そして、そんなムーミンママが中心にいるからこそ、お客さんはみんな、ムーミン屋敷に集まります。

相手のことを縛ることなく、さりげない温かさで親切を尽くせるムーミンママこそ、ヨギー1位にふさわしいと私は思ったのですが、みなさんはいかがですか?

人間の常識や偏見に縛られない妖怪や動物の中には、もっとたくさんのヨギーがいると思います。みなさんも、自分なりにランク付けしてみて下さいね!