みなさん、こんにちは。丘紫真璃です。
今回は、土方久功氏の『ぶたぶたくんのおかいもの』という、何とも独特でかわいい絵本を紹介したいと思います。
土方氏は、はじめから絵本作家というわけではなかったようです。画家、彫刻家として活躍していた芸術家でした。しかし、日本での制作に行き詰まりを感じた土方氏は、南洋のミクロネシアに渡り、現地の人々の生活の中に溶け込んで暮らしました。
そんな異色の経歴を持つ土方氏が描いた絵本『ぶたぶたくんのおかいもの』と、ヨガはどんなつながりがあるのでしょう? みなさんと考えていきたいと思います。
土方久功氏ってどんな人?

土方氏は1900年に東京都で生まれ、1924年に東京美術学校彫刻科を卒業します。当時の日本は、西洋美術に強く影響されていました。きれいに正確に描くことが求められる風潮にあったのです。しかし、土方氏はそんな風潮に疑問を持ちました。芸術にとって、きれいに正確に描くことは、どれだけ重要なのだろうかと思ったのです。
その答えを探すため、彼は、南国のパラオに飛び、パラオの人々と同じような生活スタイルを実践しました。今でいう人類学者のフィールドワークのようなことですね。
そのようにして、パラオ諸島や、ヤップ島、サテワヌ島、トラック諸島、ポナベ島、クサイ島、ヤルート、サイパン島、ロタ島などで戦後まで暮らし、現地の人々の記録を残した土方氏ですが、戦後は病を患い帰国。その後は日本で暮らし、彫刻や詩などを制作して暮らしました。
この時まで、土方氏は絵本作家ではありませんでしたが、福音館書店の松居直氏の依頼をきっかけに絵本を4冊ほど制作しています。今回紹介する『ぶたぶたくんのおかいもの』はその中の1冊で、1970年に出版されました。
はじめてのおかいもの

では、『ぶたぶたくんのおかいもの』がどんな絵本なのか、見ていきましょう。
主人公は、かわいいコブタのぶたぶたくん。出だしは、こんな風に始まります。
「きみたち、こぶたの ぶたぶたくん しってる?
この ぶたぶたくんの ほんとうの なまえを しってるひとが いるのかしら。
だれもが ぶたぶたくんと よぶのには わけがあってね。
この こぶたくんは あるくときも そうでないときも、よく おおきな こえや ちいさな こえで、ぶたぶた ぶたぶた というくせがあるのさ。
それで いつのまにか みんなが ぶたぶたくんと よぶように なってしまったのさ。
おかあさんまでが じぶんで つけてやった なまえを わすれてしまって、ぶたぶたくんて よぶんだから、ほかの なまえは なくなってしまったのさ」文.絵 土方久功.『ぶたぶたくんのおかいもの』. 福音館書店.1970.p,2
いきなり愉快な始まり方ですね。
さて、ある日、ぶたぶたくんは、お母さんからお買い物を頼まれます。パン屋さん、八百屋さん、お菓子屋さんに行って、お買い物をしてくるようにとお願いされるのです。
ぶたぶたくんは、お母さんと一緒なら何度もお買い物をしたことがありますが、一人でお買い物をしたことは、まだ一度もありません。
でも、首に黄色いリボンを結んでもらったぶたぶたくんは、おかいものカゴを持つと、はりきって、お買い物に出かけます。はじめてのおつかいですね。
お友達のかあこちゃんや、こぐまくんと出会ったり、買う物がわからなくなってしまいそうになったり、帰り道に不安になってしまったり。
この絵本は、ぶたぶたくんが、そんな小さな困難を乗り越えて、無事、お買い物をすませるまでの物語です。
縛られていない自由な絵

文章のリズミカルさや、物語のかわいらしさが素敵なのはもちろんなのですが、この絵本の素晴らしいところは、何と言っても、独特で可愛らしい土方氏の絵にあると思います。
『ぶたぶたくんのおかいもの』の絵は、決して、正確とは言えません。よく見ると、お店の柱はゆがんでいますし、八百屋さんに並んでいる野菜だって、びっくりするほど大きいですし、下書きの鉛筆の線が消えずに残っているところがいくつもあるくらいです。
世界観もとても不思議です。ぶたぶたくんがお買い物に出かける道には富士山のような山が描かれているのに、パン屋さんにいるのはミクロネシア風のおじいさんだったり。かと思ったら、お菓子屋さんは、日本人のおばあさんだったり。
ミクロネシアなのか、日本なのか、わからないような独特の世界観で描かれているのです。
ぶたぶたくんの絵は、自由です。正確に描かなければならないとか、世界観を統一しなければならないとか、そういう縛りは、全くありません。
土方氏が、こんなにも自由で縛られていない絵を描くことができたのは、彼自身が常識などには全く縛られていない自由な生き方をしてきたからでしょう。
考えてみたら、土方氏の生き方は自由すぎますよね。海外に行って暮らすことが珍しかった大正の時代に、パラオまで飛んで、現地の人々の生活に溶け込んで、フィールドワークを実践してしまうんですから。
ヨガでは縛られていないことが重要だと言われますが、彼の絵も、生き方も、全く縛られていない自由さがあります。その点で、『ぶたぶたくんのおかいもの』は、ヨガ的であると言うことができると私は思うのですが、みなさんはどう思いますか?
サットヴァさがあふれる絵本

土方氏の絵が、何とも言えない独特のかわいらしさをかもしだすのは、土方氏がパラオをはじめ、南国の島々でフィールドワークを実践していたことも背景にあると思います。
日本で、西洋美術に疑問を持ち、真の芸術の答えを求めて、土方氏は南国のパラオに飛んでいきましたよね。そうして、土方氏が当時のパラオで見い出したものは、自然と共に暮らす人々の暮らしでした。
大昔、人は神を信じ、神に祈って歌い踊り、豊作を願いました。全ての生きとし生けるものに神が宿っていると信じ、自然を敬う心がありました。そうした心が、当時のパラオの人々には息づいていたのです。そんな当時のパラオの人々は、ヨガでいうサットヴァな心の持ち主だったと言えるのではないでしょうか。
そして、土方氏が、パラオに行って見い出だしたものは、自然を敬い、サットヴァな心を失わない人々だったのではないでしょうか。
そんな彼らと生活を共にした土方氏は、彼らのサットヴァをたっぷりと吸収しました。彼が吸収したサットヴァは、絵本製作に遺憾なく発揮され、独特なかわいらしさがあふれる絵本につながっていきました。
何とも言えないかわいらしさが、子どもの心も、大人の心もギュッと捕まえて離さないのです。
『ぶたぶたくんのおかいもの』の魅力は、実際に絵を見ていただかないと伝わらないと思います。子どもが喜ぶことはもちろん、大人の方もものすごく楽しめます。読めば癒させること間違いなし。ぜひ、読んでみてください!










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