みなさん、こんにちは。丘紫真璃です。
今回は、アメリカの著名な絵本作家であり、挿絵画家であり、また園芸家であるターシャ・テューダーを取り上げたいと思います。
私が初めて、ターシャ・テューダーのことを知ったのは、NHKの番組を見た時だったと思います。花があふれる庭や、そこを走るコーギー犬、その庭を作っているターシャ・テューダーの様子にビックリして夢中になり、かなり熱心にテレビを見ていたことを覚えています。
50歳半ばでバーモンド州の広大な土地を手に入れ、そこに花であふれる楽園を作り上げ、糸をつむいで服を作り、牛を飼って乳をしぼり、畑で野菜を採って自給自足のスローライフを実践してきたターシャ・テューダー。そんな彼女とヨガのつながりを考えていきたいと思います。
著名な絵本作家兼挿絵画家

ターシャ・テューダーは、1915年マサチューセッツ州ボストンで生まれました。両親ともボストンの名家の出身で、大統領夫人やマーク・トウェインなど、ボストン社交界の名士たちと親交があったようです。
けれども、ターシャ自身は幼い頃から社交界には全く興味がなかったようで、庭いじりをしたり、牛のお乳をしぼったりしている方がずっと好きな子どもでした。また、子どもの頃から古いものが大好きで、好んで昔風の服を着ていたので、学校の友達からはからかわれてたそうです。そのため、臆病な子どもだったということですが、それでも、昔風の服を着続けたそうですよ。ターシャの好きなものを貫く強さを感じますね。
両親が9歳で離婚した後は、コネチカット州レディングに住む両親の友人宅で暮らします。ボストンよりも田舎のレディングを、ターシャはとても気に入っていたそうですよ。
23歳で結婚し、同年『パンプキン・ムーンシャイン』という絵本を出版。これが彼女のデビュー作となりました。
結婚後は、4人の子どもに恵まれますが、夫がターシャの収入に頼っていたらしく、彼女は生活費のために、次々に絵本を制作します。
1945年には『マザー・グーズ』という絵本でコールデコット・オナー賞を、1957年には『1is One』という絵本で、再びコールデコット・オナー賞を受賞して、画家としての地位を確かなものにしました。
また『秘密の花園』や、『若草物語』、『たのしい川べ』などの名作の挿絵も多数手がけ、80冊以上の本の出版に携わりました。
1830年への憧れ

1961年に離婚した後、4人の子のシングルマザーとなったターシャは、子どもたちが成人するまで、絵の収入で生活を支え続けます。
1970年に出版した『コーギービルの村まつり』という絵本が大成功。子どもたちも成人していたため、ターシャは、この絵本で得た収入で、昔から憧れていたバーモンド州の広大な土地を購入しました。
その土地に、息子のセスが、ターシャの希望である古い時代そのままの家を建ててくれたため、彼女はそこを拠点に広大な土地を耕して、素晴らしい庭を作っていきます。
コーギーコテージと呼ばれるこの家と庭は、彼女のスローライフの拠点となりました。
コーギーコテージを見た時の感想を、『ターシャ・テューダーの世界 ―ニューイングランドの四季』という本の作者であるリチャード・ブラウンは、次のように語っています。
突然1830年という年に戻ったようだった。現実離れしていたが、これが現実である証拠に、雄山羊の強烈なにおいがただよい、遠くのロープに干してある洗濯物が風にはためいていた。大きな家と納屋は丘の斜面に建っており、建物をおおい隠すように茂ったブドウの木やツルバラ、ライラックがそれらにやわらかみを与えている。納屋の庭ではだらんとした耳の山羊が2、3びき草を食べ、屋根の上では鳩が胸をはって歩き、羽づくろいしている。
色鮮やかな鶏の群れがあたりをうろつき、互いにつつきあったり地面をひっかいたりしている。あたたかい空気のなかに、つんと鼻を刺激するまきの煙のよいにおいがたちこめ、この家の持ち主がいまだに旧式な鋳鉄製のこんろで料理することを物語っている。目の前に広がる光景は、ジョージ・ヘンリー・ダリーかウインスロー・ホーマーの手になる19世紀の田舎の景色か、あるいはもちろん、ターシャ・テューダーのさし絵のように見えた。ターシャ・テューダー、リチャード・ブラウン.『ターシャ・テューダーの世界 ―ニューイングランドの四季』. 株式会社文藝春秋.1996.p,7
1830年といえば、まだアメリカの西部には広大な草原や森が広がっていた時代。開拓者たちは次々に西部の自然の中に出ていき、そこを耕して畑を作り、糸をつむいで服を作り、家の中にはろうそくの灯りをともし、牛のお乳をしぼってそれを飲むといった暮らしを送っていました。
ターシャは幼い頃から1830年に憧れていたそうで、バーモンドの自然豊かな土地の中で、昔ながらの暮らしを実践していったのです。
畑を作って野菜を取り、糸をつむいで昔ながらの服を作り、家の中にはろうそくをともして、牛のお乳をしぼって飲むという自給自足の暮らしですね。
そしてもちろん、庭造りに精を出し、広大な土地を花溢れる素晴らしい庭へと変えていきました。
喜びの毎日を自分で作る

ターシャの家族は、冗談で、スティルウォーター教という宗教を作っていたのだそうです。そのことについて、ターシャは次のように語っています。
宗教といっても、これは心の持ちかたをあらわしているだけです。スティルウォーターという言葉は、安らかなもの、ストレスのない生活を意味しています。
いまの人はいつもあくせくしているでしょう。カモミールティーでも飲みながら、夕方のポーチのロッキングチェアにすわってツグミの澄んだ鳴き声に耳をすます。そんなゆったりとした時間を持つようにすれば、人生がもっと楽しくなると思います。
(略)
スティルウォーター教は、徹底した快楽主義者です。人生は耐え忍ぶためではなく、楽しむためにあるのです。フラ・ジョヴァンニのすばらしい言葉をご存知ですか? 彼は何百年も前の老修道士で、パトロンにこう書き送っています。「この世の悲しみは幻にすぎません。その後ろに、しかもわたしたちの手の届くところに喜びがあります。喜びを受け入れましょう」。これはスティルウォーター教のもっとも重要な戒律です。ターシャ・テューダー、リチャード・ブラウン.『ターシャ・テューダーの世界 ―ニューイングランドの四季』. 株式会社文藝春秋.1996.p,70
ターシャが、このように語ることができたのは、自分自身が幸せになれる暮らしを作り上げてきたからではないでしょうか。
ターシャの毎日には、彼女の好きが徹底的にあふれています。大好きなコーギー犬が足元を走り回り、ネコや山羊、オウムや牛といった動物たちがいつも周りにいて、庭は花であふれているという暮らし。
家の中は大好きな1830年のアンティーク家具をそろえ、大好きな古い時代の服を着て、薪ストーブでこだわりの料理を作って楽しむという暮らし。
子ども、料理、ペット、自然…… 好きで溢れた暮らしをターシャは絵にし、どんな時でも、自分の好きを貫き通しました。
ターシャはいつどんな時でも、喜びを作り出してきたのです。彼女は、自分の人生を振り返ってこんな風にも語っています。
わたしは、社会通念より自分の価値観に従って生きるほうを選びました。だから、おもしろくて充実した人生を歩んできたのだと思います。
ターシャ・テューダー.『ターシャ・テューダーの言葉 今がいちばんいい時よ』. 株式会社KADOKAWA.2024.p,140
スティルウォーター教と同じく、ヨガでも一番大切なことは安らかなストレスのない心持ちでいることだと言われています。そのために大切なことは、他人や社会の価値観に振り回されず、自分の価値観をしっかりと持つことでしょう。
自分の価値観をしっかりと持つために重要なことは、自分の心にウソをつかずに、しっかりと自分を知ることだとヨガでは言われています。
ターシャは自分の心が求めるものをよく知っていて、独自の感性で選りすぐってそろえ、穏やかでストレスのない生活を作り上げてきたのです。
そんなターシャは、スティルウォーター教の長老であると同時に、ヨギーだと言ってもいいのではないかと私は思うのですが、みなさんはいかがですか?
ターシャの魅力は、彼女の愛らしい挿絵や絵本、美しい庭の写真集や名言集などを実際に目にしていただかないと、伝わらないと思います。彼女の美しい庭の写真を見ているだけで、不思議に心が穏やかになります。まだターシャ・テューダーを知らないという方はぜひ、ターシャの世界に浸ってみて下さいね!
- ターシャ・テューダー、リチャード・ブラウン.『ターシャ・テューダーの世界 ―ニューイングランドの四季』. 株式会社文藝春秋
- ターシャ・テューダー.『ターシャ・テューダーの言葉 今がいちばんいい時よ』. 株式会社KADOKAWA











