みなさん、こんにちは、丘紫真璃です。
今回は、『きょうはなんのひ?』の絵本を取り上げたいと思います。
子どもの頃に、この絵本が家にあったのですが、本当に大好きで、何度も何度も読みました。大きくなってからも、しょっちゅう取り出しては読んでいましたっけ。大人になった今でも、絵本の筋が頭にスラスラ出てくるくらいですから、本当に何度も読んだのだろうと思います。
そんな私の大好きな絵本は、日本を代表する児童文学作家であり、翻訳家であり、児童文学研究者である瀬田貞二と、同じく日本を代表する絵本作家の林明子の贅沢なコラボで生まれました。
今回は、そんな贅沢なコラボで生まれた名作絵本である『きょうはなんのひ?』とヨガのつながりを、みなさんと考えていきたいと思います。
日本を代表する児童文学家のコラボレーション

『きょうはなんのひ?』の作者である瀬田貞二は、日本の児童文学界を語る上で欠かせない重要な存在です。
1916年に東京で生まれ、東京帝国大学文学部を卒業。1949年からは平凡社に入社し、『児童百科事典』全24巻の企画編集に携わります。
1957年に平凡社を退社した後は、児童文学界で、翻訳、評論、創作と、幅広く活躍します。特に、翻訳は『指輪物語』や『ナルニア国ものがたりシリーズ』『ホビットの冒険』などの名作ファンタジーや、『おだんこぱん』や『三びきのやぎのがらがらどん』など、有名な作品を多数手がけています。みなさんも一度は、瀬田貞二の翻訳の物語を読んだことがあるのではないでしょうか。
また日本の民話の再話にも力を入れていて、『かさじぞう』や『ふるやのもり』は、ロングセラーとなっています。
さらに創作でも活躍しており、『なんきょくへいったしろ』で産経児童出版文化賞を、『落穂ひろい』で日本児童文学学会賞や日本児童文学者協会賞特別賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞しています。また、今回取り上げる『きょうはなんのひ?』でも絵本にっぽん賞を受賞しています。
日本に児童文学を普及させることにも力を入れて、毎週土曜日には自宅を解放し、子どもたちに本を貸し出す瀬田文庫を開いていました。瀬田文庫は、死の直前まで続けられていたそうです。
日本の児童文学を語る上で、欠かせない方ですね。
挿絵を手掛ける林明子も日本の絵本作品を語る上で欠かせない存在で、『こんとあき』や、サンケイ児童出版文化賞美術賞を受賞した『おふろだいすき』『まほうのえのぐ』などの他にも、『はじめてのおつかい』や『あさえとちいさいいもうと』などたくさんの絵本を手掛けています。
林明子の温かくて自然なぬくもりにあふれた子どもの絵を目にしたことがあるという方は、きっと、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな日本の児童文学界を語る上で欠かせない2人から生まれた『きょうはなんのひ?』は、言うまでもなく素晴らしい名作です。では、早速見ていきましょう。
まみこの仕掛けるサプライズ

この絵本の冒頭は、こんな風に始まります。
あさ、まみこは、げんかんをでるとき、 「おかあさん、きょうは なんのひだか、しってるの? しーらないの、しらないの、しらなきゃ かいだん 3だんめ」 と、うたをうたって、スキップしながら、がっこうへ いってしまいました。
作 瀬田貞二.絵 林明子.『きょうはなんのひ?』. 福音館書店.1982.p,2
お母さんは、階段の3段目を見て、赤いリボンを首につけた茶色い子犬のぬいぐるみが、小さな手紙を持っていることに気がつきます。
その手紙は、赤いひもで結んでありました。お母さんが開いてみると、
ケーキのはこをごらんなさい
作 瀬田貞二.絵 林明子.『きょうはなんのひ?』. 福音館書店.1982.p,4
と、まみこの字で書いてあったのです。
そこで、お母さんは居間にあったケーキの箱を見てみました。すると、シュークリームの間に、赤い手紙がはさんであったのです。開けてみますと、次は玄関のかさたての中を見るようにと書いてありました。
そして、玄関の傘立てに入っていた手紙を開いてみると、まみこの好きな絵本を見るように書いてあり……。
まみこの好きな絵本を開いてみると、今度は、庭の金魚の池にも手紙が浮かんでいるから見てみるようにと書いてあり……。
お母さんはまみこの手紙の指示に従って、家じゅうから、赤いひもで結んだ手紙を次から次へと見つけ出します。
家事をほっぽり出したまま、まみこの手紙を探すお母さんは、大変そうだけど楽しそう!
最後に見つけたまみこの手紙には、お父さんに電話で上着のポケットを探ってみるように言ってほしいというようなことが書いてありました。
そこで、お母さんが、早速、お父さんの会社に電話をして聞いてみますと、確かに、お父さんの上着のポケットには、赤いひもの手紙が入っていたのです。
でんわのむこうで おとうさんの おどろいたようなこえが きこえました。 「あ、あった、あった。なに、なに? とうとう ゆうびんばこに プレゼントがとどきました。おせわさま なんだい こりゃ」 おかあさんは わらってしまいました。 「かえってから、おはなししますわ。それより、あれ、わすれないでくださいね」 「わすれっこないさ」 でんわのむこうで、こんどはおとうさんが くすくすわらっていました。
作 瀬田貞二.絵 林明子.『きょうはなんのひ?』. 福音館書店.1982.p,22
さて、夕方、お父さんが会社から帰ってきました。お父さんとお母さんは、郵便箱に入っていた小包を開きます。すると、中から現れたのは、きれいな折り紙の箱でした。
その(折り紙の箱の)ふたをとりますと、なかから、また、ひとまわりちいさい こばこがでて、そのふたをとると、またこばこ……こうして、じゅんじゅんにちいさなはこがあらわれて、さいごの十ばんめのはこには、ちいさなむらさきの りゅうのひげのたまと、ちいさなあかいなんてんのみが、ひとつずつはいっていました。
作 瀬田貞二.絵 林明子.『きょうはなんのひ?』. 福音館書店.1982.p,26
この小さな玉こそが、まみこからの両親へのプレゼントだったのです!
大喜びの両親は、お返しのように、まみこへプレゼントを渡します。それは、赤いリボンをつけたかわいらしい茶色い子犬でした。本物の生きた子犬に、まみこは大喜びです。
プレゼントを渡し合いっこして温かい雰囲気に包まれたところで、ラスト、謎解きが行われます。まみこの十枚の手紙の最初の文字をたどっていきますと、「けっこんきねんびおめでとう」という言葉になったのです。
そう。今日は、まみこの両親の十回目の結婚記念日だったのですね。
最後まで読ませる仕掛けはさすがですし、この楽しい作品を、林明子の温かいぬくもりであふれた絵がより素敵なものに仕上げています。
一度、みなさんにも実際に読んでいただきたいと思います。
相手を喜ばせて自分も嬉しい

結婚記念日の両親をびっくりさせて喜ばせたいと、まみこがワクワクしながらプレゼントを用意したんだろうということは、絵本全体からとてもよく伝わってきます。
林明子の描くまみこは、歌いながら学校に行く時も、満面の笑顔です。また両親が折り紙の箱を次から次に開けていく時にも、ものすごく嬉しそうにクスクス笑っているのです。こちらまで、まみこにつられてクスクス笑いたくなるくらい嬉しそうな顔をしているのです。
そしてまた、大人になった今見てみると、まみこの両親もとってもステキなんですよね。
まみこのお母さんは、冒頭では、青いしまのシャツの洗濯物を手にしていますから、おそらく、洗濯中だったことがわかります。
けれども、絵をよく見ていくと、青いしまのシャツは途中で放り投げて、まみこの手紙を探す方を優先しています。
朝ご飯の皿は出しっぱなしだし、掃除機も放りっ放し。
でも、お母さんはそんなことよりも、まみこの手紙を探す方を優先しています。お母さん自身、まみこからのサプライズをものすごく楽しんでいることが、絵からよく伝わってくるのです。
きっと、このお父さんとお母さんは、今まで何度も、まみこに楽しいサプライズのプレゼントをあげたのだろうということも、ありありと想像できます。まみこは、両親からうれしいサプライズプレゼントを何度ももらっているからこそ、自分も両親にサプライズプレゼントのお返しをしたのでしょうね。
この家族には、相手をびっくりさせて喜ばせたい気持ちが、みんなにあふれているのです。それが絵本から本当に伝わってきます。
ヨガでも、誰かを幸せにすることはとても大切なことだと繰り返し書かれています。誰かを幸せにすると自分が嬉しい気持ちになるからです。
まさしく、この絵本にあふれているのはこれですよね。相手を喜ばせて自分も嬉しくなるという気持ちです。
そんな大切なことを、この絵本では決して押しつけがましく描きません。まみこやお父さんとお母さんの楽しそうな様子を通して、その気持ちは自然に伝わって来るだけです。
今日はいったい何の日なんだろう? という謎も冒頭に用意されていますから、読者は謎解き感覚で、絵本を読み進めることができます。
そうして楽しく読み終わった時、何だか自分も楽しいサプライズプレゼントを、誰かに用意したくなってしまうのです。
児童文学で何より大切なことは、まず、子どもが物語を楽しんでくれること。そして、その物語が、大人が読んでも楽しめる質の高い文学であることだと、瀬田貞二はいろんな本で語っています。
この2つがそなわっている作品こそ、時代を超えて愛される本物の児童文学作品だと言えるというのです。
『きょうはなんのひ?』は間違いなく、その2つを見事にかねそなえている児童文学作品だと言えるでしょう。この絵本はきっとこれからも時代を超えて愛され続けるに違いありません。
みなさんもぜひ、『きょうはなんのひ?』を読んでみて下さい。お子さんと読むのも素敵ですし、大人の方が一人で読み返すのも楽しいと思いますよ!



















